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徳島行きのフェリーに乗ったら、四国を一周することになりました

tatsuyaishiwatari
2026年1月1日
読了時間: 10分

連載「行けるところまで行ってみる」2025年編 ― 東京から船に乗って、12日間/第1回(10月25日〜28日)

この連載について 毎年この時期に、その年に行けるところまで行く旅をしています。2025年は東京からフェリーで四国へ渡り、瀬戸内を抜けて大阪・名古屋を通って帰るまでの12日間。全4回でお届けします。 第1回 徳島行きのフェリーに乗ったら、四国を一周することになりました(10/25〜28)← いまここ 第2回 姫路で合流。頼ってみたら、遠くまで行けました(10/29〜11/1) 第3回 弥生から江戸まで歩いて、ひとりに戻りました(11/2〜11/5) 番外編 手すりのメモと割引のメモ、12日間ぶん全部

毎年この時期になると、旅に出ています。今年もひとつ、まとまった距離を走ってきました。


先に少しだけ書いておくと、私は脳卒中の当事者で、右半身に麻痺があります。車は左アクセルに改造したものに乗っていて、運転そのものは問題ありません。歩くのも杖なしでいけますが、階段や坂では左側に手すりがあるかどうかで難易度がまるで変わります。

旅の話に時々その手の話が混ざりますが、深刻な話ではありません。「今年はここまで行けた」という記録だと思って読んでいただければ。


それともうひとつ。この記事では、障害者手帳で使える割引の話も書いていきます。フェリーもETCも半額になります。これがあるから行ける場所は、かなりあります。


今年の目的地は、姫路城と神戸と、大塚国際美術館


行き先のほうが先に決まりました。姫路城を見たい。神戸も歩きたい。それから、鳴門の大塚国際美術館。地図を広げると、この3つは瀬戸内をはさんできれいに並んでいます。問題は、どうやってそこまで行くか。現地は車で回りたい。でも東京から一気に走るのは、さすがに現実的ではありません。


そこで出てきたのがフェリーでした。東京・有明から徳島まで、オーシャン東九フェリーが出ています。車ごと乗ってしまえば、寝ている間に四国に着く。移動と宿が一体になった乗り物です。これは体にいちばん優しい。


そして、ここが大事なところなのですが、障害者手帳を持っていると、フェリーの運賃が半額になります。高速道路のETCも、事前に登録しておけば半額です。この2つがあるだけで、「行く/行かない」の判断はずいぶん変わります。

……と、ここまでは良かったんですが、地図をもう一度眺めていて思ってしまったわけです。


「徳島に着くなら、そのまま東に戻るのはもったいないのでは?」


高知があって、松山があって、しまなみ海道がある。ぐるっと回ってから姫路に向かっても、目的地は何ひとつ変わりません。増えるのは、旅のほうだけです。

というわけで、前半は四国一周のひとり旅ということになりました。自分で言い出しておいて、出発前夜にちょっと不安になったのは内緒です。

🎫 割引のメモ|フェリーとETC 身体障害者手帳の提示で、フェリーの旅客運賃は半額。有料道路のETC割引も、事前に自治体の窓口で登録しておけば半額になります(対象は登録した1台のみ)。長距離の旅では、効き方がまるで違います。条件は制度や事業者ごとに違うので、出発前に確認を。
オーシャン東九フェリー「りつりん」の乗船記念ボード
オーシャン東九フェリー「りつりん」の乗船記念ボード
途中の徳島港に到着。今回はここで降ります。
途中の徳島港に到着。今回はここで降ります。

徳島上陸、まずは中華そば


船は昼過ぎに徳島港へ。デッキに出ると、曇り空の下に港が見えてきます。ここから12日間、この車で走るんだなと思うと、少し背筋が伸びました。

上陸してまず向かったのは、中華そばの「いのたに」。徳島ラーメンの有名店です。濃い茶色のスープに豚バラ、生卵。カウンターの向こうで大将が黙々と丼を並べていて、店内には色紙がびっしり。

長距離移動のあとの一杯目としては、完璧でした。


「中華そば いのたに」の外観
「中華そば いのたに」の外観
徳島ラーメン
徳島ラーメン

道中、神山まるごと高専へ寄る


高知へ向かう途中、山あいに真新しい校舎が見えてきます。Sansanの創業者が私費を投じてつくったと言われている、神山まるごと高専です。

ちょうど学園祭か何かをやっているときでしたが、ここはかなり面白い取り組みをやっているところとして、どうしても見てみたいと思って来ました。


高知へ。市場で友人と合流


そのまま高知へ移動。夕方には市内に入っていました。

夜はひろめ市場へ。ここで、僕の地元の友人(埼玉県川口市)と落ち合いました。妻とも共通の知り合いで、今は高知に移って子育て中。「その日行くよ」と連絡をもらって、現地でそのまま合流という流れです。ひとり旅の途中に、こういう予定外がひとつ入ると一気に旅らしくなります。

ひろめ市場は、屋台がぎっしり並んでいて、好きなものを買ってきて共有のテーブルで食べるスタイル。刺身の大皿と唐揚げを確保して席につきました。ああいう場所は、本当にありがたい。

そのあと、ライトアップされた高知城へ。夜の城は、昼とは別の建物みたいに見えます。人もほとんどいなくて、静かでした。


ひろめ市場の屋台
ひろめ市場の屋台
カツオ。脂がのってて美味しかった
カツオ。脂がのってて美味しかった
ライトアップされた高知城
ライトアップされた高知城
「国宝 高知城」の石碑
「国宝 高知城」の石碑

桂浜の朝、龍馬を見上げる


翌朝は桂浜へ。

到着してまず驚いたのが、階段の真ん中に、両側から握れる手すりがついていたこと。観光地の階段でこれがあると、本当に助かります。上る前から「これは行けるな」と分かるので、気持ちのほうが先に軽くなる。

坂本龍馬像は、思っていたよりずっと大きくて、見上げる角度がちょうどよかった。台座の下から見上げると、視線の先に太平洋が広がっています。あれは写真で見るのと実物とで、いちばん差があるやつでした。

浜に降りて、龍王岬まで。波の音がずっと聞こえていて、朝の光がまっすぐ当たっていました。

🤝 手すりのメモ|桂浜 メインの階段は中央に二列の手すりあり。上りも下りも問題なし。浜まで降りるスロープもあります。売店エリアからのアクセスは良好。

「桂浜」のサインオブジェ
「桂浜」のサインオブジェ
中央に二列の手すりが入った階段
中央に二列の手すりが入った階段
坂本龍馬像を見上げる
坂本龍馬像を見上げる
展望デッキから太平洋
展望デッキから太平洋
龍王岬へ向かう道
龍王岬へ向かう道

坂本龍馬記念館で、少し休憩


桂浜のすぐ上にある、高知県立坂本龍馬記念館へ。

展示自体も面白いのですが、個人的にありがたかったのは、屋上テラスから太平洋が一望できること。さっき浜から見上げた海を、今度は上から見下ろす。同じ海なのに、まるで違って見えます。




にこ淵 — 手すりは、片側にしかない


さて、この日のハイライトです。


仁淀川の支流にある「にこ淵」。写真で見たあの青を、どうしても見てみたかった。

道路脇に車を停めて、入口へ。いきなり「ここ注意」の標識が立っていて、少し笑ってしまいました。注意なのは分かってるんですが、何をどう注意すればいいのかは書いていない。

そこから先は、まず吊り橋。細い板の上を渡っていきます。次に、渓谷へ降りていく急な坂と階段。


これがなかなか手強かった。手すりが片側にしかないんです。私の場合、下りは左側に手すりがほしいのですが、こういう道は「ある側」に合わせて体の使い方を変えるしかありません。途中、逆向きに体を回しながら降りた区間もありました。バリアフリーという言葉から、いちばん遠い場所ではあります。

それでも、降りきりました。

そして、あの青です。

深い緑の岩壁に囲まれて、白い滝が落ちていて、その下の水がターコイズに光っている。人工物が一切ない。ここまでの30分が全部帳消しになる色でした。しばらく座って、ぼーっと眺めていました。

行ける人には、行ってほしい。ただし、靴はちゃんとしたものを履いていってください。私はそこだけは抜かりありませんでした。

🤝 手すりのメモ|にこ淵 遊歩道は急勾配。吊り橋あり。手すりは基本的に片側のみで、途中で途切れる区間もあります。滑りにくい靴は必須。時間には余裕を。ただし、降りた先の景色は本当に見る価値があります。

「にこ淵」の案内標識
「にこ淵」の案内標識
片側だけに手すりが続く坂
片側だけに手すりが続く坂
渓谷に架かる吊り橋
渓谷に架かる吊り橋
にこ淵の滝つぼ
にこ淵の滝つぼ

道後の夜、鍋焼きうどんとビール


にこ淵から山を越えて、この日は松山・道後まで。


夜ごはんは「つるちゃん」のカレーうどん。松山の名物です。甘めのつゆに練り物と卵。長い一日の終わりに、これ以上ないメニューでした。ビールも一杯だけ。


そのあと道後温泉本館の前へ。ライトアップされた建物が、思っていたよりずっと派手で、思っていたよりずっと良かった。坊っちゃんカラクリ時計、ハイカラ通りのアーケード、並んだ提灯。

ひとりで歩いても、ちゃんと楽しい夜でした。

カレーうどん美味しかったです!
カレーうどん美味しかったです!
ライトアップされた道後温泉本館
ライトアップされた道後温泉本館
道後ハイカラ通り
道後ハイカラ通り
夜の玉の石
夜の玉の石

朝の道後温泉本館と、松山城


翌朝、道後温泉本館へ入りました。


改修を経た館内は、床に「神の湯」「shop」といった方向サインがしっかり入っていて、迷いません。こういうのは地味ですが、ものすごく効きます。又新殿の赤い扉や、館内の展示もゆっくり見てきました。


そのあと松山城へ。

ここはロープウェイで上まで上がれるので、高低差の大半はそれで解決します。「現存12天守」のパネルの前で、また律儀に一枚。


ただ、上がった先で手すりが途切れる区間があり、そこで引き返しました。無理して登って、帰りに困るのがいちばん困る。というわけで、天守は今回はおあずけです。現存天守はそもそも当時のまま残っていることに価値がある建物なので、ここは仕方がない。「行ってみて、途中で判断して、引き返す」も旅のうちだと思っています。次に来るときの宿題ができました。


このあと、坂の上の雲ミュージアムへ。建物そのものがかなり面白い。同じ松山の伊丹十三記念館にも寄ったのですが、こちらは休館日。外観だけ眺めて退散しました。旅にはこういう日もあります。

🤝 手すりのメモ|道後温泉本館・松山城 道後温泉本館は館内の動線表示が明快で、迷いません。松山城はロープウェイで高低差の大半をクリアできますが、上がった先の一部で手すりが途切れます。現存天守は、バリアフリーという観点ではやはり難しい建物です。行けるところまで行って判断する、が現実的。
朝の道後温泉本館
朝の道後温泉本館
床に入った方向サイン
床に入った方向サイン
「現存12天守」のパネル
「現存12天守」のパネル
松山城へ続く坂道
松山城へ続く坂道
松山城のロープウェイ
松山城のロープウェイ
坂の上の雲ミュージアムの外観
坂の上の雲ミュージアムの外観
各階を結ぶスロープ
各階を結ぶスロープ
伊丹十三記念館
伊丹十三記念館

しまなみ海道を渡って、尾道でラーメン


四国の最後は、しまなみ海道です。


今治側の展望台から、来島海峡大橋を眺めました。晴れていて、海が青くて、島がいくつも浮かんでいる。「しまなみ」のオブジェの前で、これも一枚。ひとり旅のセルフィーもだいぶ上手くなりました。


橋を渡って、本州へ。尾道で「壱番館」の尾道ラーメンを食べました。背脂の浮いた醤油スープに、白ねぎがどっさり。四国の締めくくり(正確にはもう広島ですが)としては、上出来です。


こうして、「徳島に着いたついでに」で始まった四国一周が終わりました。地図で見ると、けっこうな距離を回っています。出発前の自分に見せてやりたい。

ここまでの移動で、フェリーもETCも半額でした。それだけではなくて、松山城のロープウェイをはじめ、道中の施設もほとんどが障害者手帳の割引に対応しています。使えるものは全部使いました。


制度は、使わないと存在していないのと同じです。脳卒中の当事者になってから、そのことをよく考えるようになりました。使えるものを使って、行けるところまで行って、無理そうなら引き返す。今のところ、それでだいたいうまくいっています。

「しまなみ」のオブジェの前で
「しまなみ」のオブジェの前で
来島海峡大橋
来島海峡大橋
尾道ラーメン
尾道ラーメン
「尾道ラーメン 壱番館」の看板
「尾道ラーメン 壱番館」の看板

次回へ

ここから先は、本来の目的地です。姫路城、神戸、そして大塚国際美術館。

そして姫路から、家族が新幹線で合流します。ひとりで広げた旅が、ここで急にやわらかくなる。第2回はそのあたりから書きます。


→ この旅で使った割引やサポートの情報は、番外編 手すりのメモと割引のメモ、12日間ぶん全部 にまとめてあります。

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