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手すりのメモと割引のメモ、12日間ぶん全部

tatsuyaishiwatari
1月4日
読了時間: 8分

連載「行けるところまで行ってみる」2025年編 ― 東京から船に乗って、12日間/番外編

この連載について 毎年この時期に、その年に行けるところまで行く旅をしています。2025年は東京からフェリーで四国へ渡り、瀬戸内を抜けて大阪・名古屋を通って帰るまでの12日間。全4回でお届けします。 第1回 徳島行きのフェリーに乗ったら、四国を一周することになりました(10/25〜28) 第2回 姫路で合流。頼ってみたら、遠くまで行けました(10/29〜11/1) 第3回 弥生から江戸まで歩いて、ひとりに戻りました(11/2〜11/5) 番外編 手すりのメモと割引のメモ、12日間ぶん全部 ← いまここ

本編の各回に散らばっていた「手すりのメモ」と「割引のメモ」を、ここに全部まとめました。


私は脳卒中の当事者で、右半身に麻痺があります。杖なしで歩けますが、階段や坂では左側に手すりがあるかどうかで難易度がまるで変わります。車は左アクセルに改造したものに乗っています。


同じような条件の方が旅の計画を立てるときに、少しでも役に立てばと思って書いています。訪問は2025年10月末〜11月初旬。制度も設備も変わりますので、最新の情報は各施設や窓口でご確認ください。


まず、移動まわりの制度

長距離の旅では、ここがいちばん効きます。

使ったもの

内容

フェリー

身体障害者手帳の提示で旅客運賃が半額。今回は東京・有明〜徳島のオーシャン東九フェリーを利用

ETC(有料道路)

事前に自治体の窓口で登録しておけば、通行料が半額。対象は登録した1台のみ

施設の入場料

美術館・博物館・城郭など、今回訪れたところはほぼすべて手帳割引の対象でした

フェリーは、制度を抜きにしても検討する価値があります。 車ごと乗ってしまえば、寝ているあいだに移動が終わる。宿と移動が一体になっているので、長距離の初日をまるごと省略できます。


ETCの割引は事前登録が必要です。思い立ってから当日には間に合いません。旅の計画より先に、こちらを済ませておくのがおすすめです。


一覧

詳しくは下の場所ごとのメモに書きますが、まず全体像を。

場所

歩きやすさ

ひとこと

桂浜

そのまま行ける

階段の中央に二列の手すり

にこ淵

かなり手強い

急坂、手すりは片側のみ

道後温泉本館

そのまま行ける

館内の方向サインが明快

松山城

少し注意

ロープウェイで大半は解決。天守手前で判断を

坂の上の雲ミュージアム

そのまま行ける

各階がスロープで結ばれている

姫路城

事前予約でぐっと楽に

電動車椅子+サポートが頼める

五色塚古墳

少し注意

段差は楽。ただし手すりがロープ

大塚国際美術館

そのまま行ける

この旅でいちばんよくできていた

住吉大社

少し注意

反橋が急。脇に迂回路あり

大阪府立弥生文化博物館

そのまま行ける

屋内・段差なし

仁徳天皇陵古墳

少し注意

拝所への道が粒の大きな砂利

国立民族学博物館

そのまま行ける

広く平坦。休憩スペースも多い


場所ごとのメモ


写真は、景色ではなく足元と動線を撮ったものを選んでいます。行く前に見ておくと、判断がしやすいと思うので。


桂浜(高知市)


メインの階段は中央に二列の手すりがあります。上りも下りも問題なし。浜まで降りるスロープもあり、売店エリアからのアクセスも良好です。

観光地の階段で両側から握れる手すりがあると、上る前から「これは行ける」と分かる。気持ちのほうが先に軽くなります。ここは、かなり良い部類でした。

中央に二列の手すりが入った階段
中央に二列の手すりが入った階段

にこ淵(仁淀川町)


この旅でいちばん手強かった場所です。

遊歩道は急勾配。途中に吊り橋があります。手すりは基本的に片側のみで、途中で途切れる区間もあります。滑りにくい靴は必須。時間には余裕を持ってください。

ただし、降りた先の景色は本当に見る価値があります。あのターコイズの滝つぼは、写真で見るのと実物とでまったく違いました。行ける方には、ぜひ。

片側だけに手すりが続く坂
片側だけに手すりが続く坂
吊り橋
吊り橋

道後温泉本館(松山市)


改修後の館内は、床に「神の湯」「shop」といった方向サインがしっかり入っていて、迷いません。地味ですが、これはものすごく効きます。

館内の床に入った方向サイン。脱衣所にも椅子があって特に困らなかったです。
館内の床に入った方向サイン。脱衣所にも椅子があって特に困らなかったです。

松山城(松山市)


ロープウェイで高低差の大半はクリアできます。ただし、上がった先の一部で手すりが途切れます。私はそこで引き返しました。

現存天守は当時のまま残っていることに価値がある建物なので、バリアフリーという観点ではやはり難しい。「行けるところまで行って、その場で判断する」のが現実的だと思います。引き返すのも旅のうちです。

石垣沿いの坂道
石垣沿いの坂道

坂の上の雲ミュージアム(松山市)


松山城のすぐ近く。安藤忠雄の設計で、三角形の平面をした建物です。

ここは、設計の時点からよく考えられているのが入ってすぐに分かります。展示フロアは2階から4階ですが、各階がスロープで結ばれている。階段を使わずに、歩いてきた流れのまま上の階へ上がっていけます。中央には支柱のない空中階段があって、そちらが空間の主役なのですが、動線としてのスロープはきちんと別に用意されている。

車椅子でも十分な回遊性があるつくりです。「バリアフリー対応を後から足した」のではなく、最初から動線がそうなっている建物は、中を歩いていて気持ちがいい。松山城で引き返した直後だったので、余計にそう感じました。

なお、一般来館者用の駐車場はありません。近隣の駐車場を使うことになります。

各階を結ぶスロープ
各階を結ぶスロープ

姫路城(姫路市)

大手門と、その先に続く広い敷地
大手門と、その先に続く広い敷地

※電動車椅子で回っていたため、城内の写真はほとんど撮っていません。

敷地が非常に広く、坂と石段が続きます。姫路城の公式案内でも、車椅子での単独見学は難しく、介助が前提とされています。


今回は電動車椅子とサポートをお願いして、大手門から天守群の付近までしっかり回れました。歩いていたら、三の丸広場で力尽きていたはずです。天守内部の階段は現存天守そのものなので、ここは登りません。


  • 割引:手帳の提示で、本人と介助者1名が入城無料。車椅子利用の場合は、本人と介助者3名までが無料

  • サポート:電動車椅子「WHILL」のレンタルと、同行するコンシェルジュを事前予約で頼めます。窓口は姫路ユニバーサルツーリズムセンター(認定NPO法人コムサロン21)。いずれも有料・事前予約制


ついてくれたガイドさんが、とにかく旅慣れていました。どのルートなら電動車椅子で無理なく行けるか、どこで曲がれば段差を避けられるか、どこで止まれば一番いい角度で見上げられるか。全部、先回りして知っている。この旅でいちばん良い判断でした。


五色塚古墳(神戸市垂水区)


墳丘への階段は幅が広く、一段も低く、勾配もゆるやか。段差そのものは楽な部類です。

問題は手すりでした。ロープなのです。

私は上るときも下りるときも手すりに体重を預けます。ロープは引くことも押すこともできないので、支えとしてはほとんど当てになりません。段差が楽なぶん、油断すると足をとられます。握って引ける手すりが必要な方は、時間に余裕を持って行ってください。

車椅子での見学可否は未確認です。少なくとも、墳丘に上がるスロープはありませんでした。

なお、上まで登らなくても、麓から明石海峡大橋は見えます。

墳丘へ上がる階段。手すりはロープ
墳丘へ上がる階段。手すりはロープ

大塚国際美術館(鳴門市)


この旅でいちばん「よくできている」と感じた施設です。

順路にエレベーターが整備され、休憩できる椅子も多い。展示室が広いので、人の流れに押されずに自分のペースで見られます。一日いても大丈夫な構造です。

混雑した美術館で一番つらいのは、立ち止まれないことと座れないこと。ここはそのどちらも解決しています。体力に関係なく最後まで見られる美術館というのは、そう多くありません。


住吉大社(大阪市住吉区)


境内は広く、参道はおおむね平坦です。ただし反橋(太鼓橋)は勾配がかなり急なので、足元に自信がなければ脇の迂回路が確実です。

参道の石燈籠を見て歩くだけでも十分に面白い場所です。

参道に立つ日本遺産の標柱
参道に立つ日本遺産の標柱

大阪府立弥生文化博物館(和泉市)

屋内で段差がなく、ゆっくり見られます。


仁徳天皇陵古墳・大仙公園(堺市)

拝所へ向かう砂利道の足元
拝所へ向かう砂利道の足元

拝所へ向かう道が、粒の大きな砂利です。

ここは私には難所でした。


大きめの砂利を踏むと、拍子で右足が内側に返ってしまうこと(内反)があります。そうなると立て直すのに時間がかかるうえ、開けた場所には掴まるものもありません。今回は無理をせず、手前から眺めるだけにしました。


もっとも、拝所まで行っても、正面は木に覆われた土手のようにしか見えません。あの鍵穴の形は地上からは見えないので、大仙公園の案内図で全体像を把握するほうが、むしろよく分かります。公園自体は広くて歩きやすい場所です。


国立民族学博物館(吹田市・万博記念公園)

展示室が広く平坦で、段差がほとんどありません。休憩スペースも多い。体力配分を気にせず見て回れる、数少ない大型館のひとつでした。物量がすごいので、時間には余裕を。

広く平坦な展示室
広く平坦な展示室

12日間を通して思ったこと


制度は、使わないと存在していないのと同じです。

フェリーもETCも半額。施設の多くも手帳割引。そして観光地には、姫路城のような観覧サポートの仕組みが用意されている場所があります。知らなければ、そのぶん行ける場所が減るだけです。


それから、頼ることについて。

前半の四国はぜんぶ自力で回りました。後半は、電動車椅子とガイドさんにお願いしました。結果として、頼った後半のほうが遠くまで行けています。自分の足で全部歩くことにこだわらなくなってから、行ける場所がむしろ増えました。

脳卒中のあと、旅に出ることを諦めている方がいたら、この方法はけっこう現実的ですよ、と言いたいです。


本編はこちらです。

→ 第1回 徳島行きのフェリーに乗ったら、四国を一周することになりました(10/25〜28)

→ 第2回 姫路で合流。頼ってみたら、遠くまで行けました(10/29〜11/1)

→ 第3回 弥生から江戸まで歩いて、ひとりに戻りました(11/2〜11/5)


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